春節 ―正月を春節と改名した中国の祝儀料理―

■春節 ―正月を春節と改名した中国の祝儀料理―

 中国の民間では、総ての行事は旧暦で行っている。中国人民共和国が誕生し、官公庁、学校など太陽暦の一月一日を元旦としているが、民間は依然として旧暦を使用している。
 政府は正月を「春節」と改名し、この三日間を休日とした。街はドラや爆竹でドンチャン騒ぎの賑わしさである。家庭では神前に豚、鳥、魚を供え、新しい年を迎える準備におおわらわである。

 春節のご菜は普段とさほど変わりはないが、吉祥にちなんだ名前を付け縁起をかつぐのは、日本と同じである。さすが文字の国だけに、この種の言葉も多彩である。同音の材料名を目出たく表現し、形や色で縁起のよい祝儀料理を作る。
 鯛を目出度いとする日本と、鯉を上位とする中国の考えは、国民性により違いがある。鯉魚はリーユイと発音し、鯉(リー)は利につながり、魚(ユイ)は余となり利益を得る魚となる。
蝦―は腰が曲がるまで長命を意味し、かかせない。
筍子―は節々高々と言い、年々昇進する。
蓮根―世の中の先がよく見える。
豆芽―とはモヤシのことで、形が如意棒に似ているので尊ばれ用いられる。
 日本では、昆布巻きをよろこぶとし、田作りは小さいながらお頭つき、田の肥料になり、豊作を感謝する気持ちが秘められている。数の子は子孫繁栄を願ってのこと。中国では餃子は同音の交子が子宝に恵まれると言われ、新年に家族揃って餃子を作る風習がある。
 正月に作る餃子の中身にコインをしのばせ、食べ当てた者は、一年中小遣いに不自由しない幸運に恵まれる俗信がある。また西太后の食べる餃子の中に金銀宝石などを入れてあったと言われる。在日華僑の家庭では、今でもお年玉を入れ、子供たちに喜んで食べるようにしむけるそうである。
 南の方では揚げワンタンを作り、皮が花びらのように開くので、これを食べると「開運の道が開ける」と言って喜び合うそうだ。
 正月に欠かせないのが屠蘇。実は屠蘇も中国から薬酒として伝わってきたものだが、中国にはすでに無い。わが国に残され、今も続く風習である。効能は「悪性の流行病や、邪気を屠り、生気を蘇らせる」と言われるが、時代とともに薄れゆく感じがする。
 春節というと、特別な料理はないが、どの家でも火鍋子(中国の寄鍋)を用意する。内容も縁起もいい材料をそろえ春節を祝う。贅沢な火鍋に八十九足の材料を使うと言われている。それは材料の足の数できまる。鳥類なら二本足、豚、羊を使えば四本といった具合に数をかぞえる。足の多いエビやイカなどふんだんに使うことで材料が豪華になる。
 この話を聞いた人いわく、「百足(ムカデ)一匹でつりがくる」と……。


<原文ママ>
出展:折々の切楽板記(著者 福新楼 谷口昌介)より