ちゃんぽん。その由来はというと…

■ちゃんぽんと翡翠麺 ―具を豊富にし、夏バテ防止に最適な麺―

ちゃんぽん

 ちゃんぽんは、長崎が発祥の地であることは紛れもない事実である。明治以来、九州の人に愛好された九州の味である。さて、その由来はというと……。
 長崎ちゃんぽんは、福建語のチャポン(食事のこと)が訛ったと言われる。長崎は、昔から福建省とは関わりが深く、現在でも福建華僑の街として全国的に知られている。夏のペーロン競争、秋の諏訪神社のおくんちを飾る蛇踊り、崇福寺(福建人の菩提寺)の中国盆など中国の風習がいまも根強く残っている。

 長崎の人々は、彼らに親しみをこめて、「阿茶さん」の愛称で呼び、交際をつづけた。そんなある日、華僑に招かれた日本人が「チャポン チャポン(食事をどうぞ)」とすすめられた汁そばを、チャンポンと早合点したのが始まりだと言う。
 明治の中期、居留地だった新地、広馬場に、数軒の食堂が店開きした。客は主に船員や留学生、在日華僑たちだが、日本人も結構食べに通ったそうだ。
 「長崎料理史」の「ちゃんぽん」の一説に、「書生の好物、今は支那留学生の各地に入りこめる故、珍しいこともあらざりき、市中に十数軒あり、多くは華僑の製するうどんに、牛豚鶏など雑多、濃厚にすぐれ……」とある。
 長崎は、特に海産物が豊富で、ちゃんぽんには新鮮な魚、エビ、イカ、貝類、カマボコ、キャベツ、葱、もやしなど具をたっぷり使っていた。値段も安く、栄養もあることから非常に好評を得た。色々な材料をごっちゃに炊いたことから「ちゃんぽん」とよばれた。
 小学館の百科事典には、「チャンは祭りの鉦の音、ポンは鼓の音で融合しない異質のものと交互に打ち込む音」と説明している。我々もよく「酒とウイスキーをチャンポンした」とごちゃまぜの意味に使っている。
 日本語で初めて使われたのは、明治初年の「西洋道中膝栗毛」に、「楊梅瘡のあとが白なますとちゃんぽんになって……云々」の用例が初見であることから、ちゃんぽんと言う言葉は意外と新しい。
 福岡に博多チャンポンという郷土玩具がある。西日本新聞社発行の「福岡県百科事典」によると、ガラスの先端を漏斗状に膨らませ、簡単な色彩を施した郷土玩具で、管の先から息を吹き込むと底の薄い部分が振動して、澄んだ音がチャンポン、チャンポンと聞こえるので、チャンポンと呼ばれるようになったとある。
 もとは長崎渡りの中国の玩具だが、博多では、1832年(天保三)、びいどろ屋卯平が製造して放生会に売出し人気を博した。
 以前、歌麿の錦絵が切手で発売され、題名が「びいどろを吹く女」で、手にしたのは博多チャンポンと同形のものだった。昭和の初め、東京に同じオモチャがあった。たしか「ポコペン」と呼び、息を吹き込むとポコンペコンと音がした。
 余談であるが、チャンポンに欠かせない「もやし」は、福新楼(明治二十二年創業)の先々代の張加枝が種子を長崎から取り寄せ、採取したのが、福岡でのモヤシの始まりである。

●ヒスイ麺
 とかく夏は、あっさりしたものが欲しくなる。こんな時こそ「冷やしそば」など如何なもんですか。最近流行した「ヒスイ麺」はホーレン草の絞り汁と卵、小麦粉で出来た翡翠のように青色のそばである。日本の「茶そば」に似ている。
 中国ではニラを用いるので、強烈な臭いがして日本の人にはちょっと不向きである。対照的な麺に「珊瑚麺」がある。カニの脂肪や赤い卵を練り合せた赤みがかったそばである。これらのそばは、清朝のころ河道総督だった李鶴年と言う大臣が考案した、と伝えられている。
 酸味、辛味のきいた冷麺は、具が豊富で栄養満点、夏バテ防止に最適である。我が家のオリジナルな冷麺を作るのもよい。かけ汁の分量を後述するが、多めに作り蓋付きのビンに入れ冷蔵庫に保存できる。
 麺は市販のヒスイ麺を求め、もし無いときはラーメン玉で結構。麺、具、かけ汁、そして器をよく冷やし、器にレタスまたはサラダ菜をおき、茹でた麺をのせ、上に具をならべ、かけ汁を注ぐか、添えればよい。
 一般には錦糸卵、ハム、胡瓜だが、具は自由に組み合わせてもよい。例えば焼き豚、茹で鶏、エビ、イカ、棒カニ、海藻、くらげ、海たけ、かいわれ、アスパラガス、トマト、椎茸の含め煮などがある。スタミナをつけたい人は肉類を多く、ダイエットを望む女性には野菜や海藻を主にすればよいでのある。

●醤油風味かけ汁
 醤油大さじ6、酢大さじ4~5、砂糖大さじ4、酒大さじ4、水カップ1/2、味の素、生姜汁適量


<原文ママ>
出展:折々の切楽板記(著者 福新楼 谷口昌介)より