皮蛋と書いてピータンと読む。

■皮蛋と鹹蛋 ―食欲不振、消化不良、解熱には特効薬―

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皮蛋と書いてピータンと読む。殻ごと天然ソーダ、塩、わら灰をお茶で捏ねたものを、あひるの卵の周囲にぬり、籾がらで包み、かめに入れ、二カ月ほどねかせて、醗酵させたものである。ピータンは北京、天津のものを最高としている。

ピータンの黄身は濃緑褐色、白身は緑黒色で半透明、だいたい寒天のようになっている。初めての人には箸がつけづらい。

日本では腐れ卵と言って敬遠されるが、慣れると酒肴にならなくてはならぬものになる。少し柔らかくトロッと流れるものを、熱いご飯にまぶすとおかわりが欲しくなる。アンモニア臭が強い時には、殻を剥いてしばらく置くか蒸せばうすらぐ。

ピータンの殻を剥くと、表面に綺麗な花模様がついている。この模様がちょうど松葉の形をしているので、松花蛋の名があり、横に切るとバームクーヘンのように幾重にも層があり、彩りが美しいので彩蛋とも呼ばれる。

戦乱が続く明代の頃、洞庭湖のほとりに産卵のため、数百羽のあひるが飛来した。農民はその卵を集めて生計のたしにしていた。

ある日、軍隊が来るというので、慌てて近くの岸辺に埋めた。日が経って掘ってみると、臭気があったが、殻を剥いてみると、白身も黄身もすっかり固まり、味はちょっと渋みがあるが美味だった。これがヒントになり、今日のピータンが出来た。

ピータンの特徴は何と言っても純アルカリ性にある。胃腸の弱い人にはあまり勧められないが、食欲不振、消化不良、解熱、酔い醒まし、胸やけには特効薬。ピータンとザーサイを刻み、冷や奴にのせ、ゴマ油、醤油で頂くと一風変わって旨い。中国独特の加工品で、日本へも大量に輸出している。

鹹蛋(シェンタン)は俗に塩卵と言う。これもあひるの卵から作る。鶏卵でもよく、簡単に出来る。まず塩水(卵が浮く程度)に適当の酒と紅茶、わら灰を混ぜ、それに卵を浸し、約一カ月で塩分がしみ込み、出来上がる。

ピータンは殻を剥いてそのまま食べるが、鹹蛋はかならず茹でる。宴席の場合は、殻付きのまま包丁で切って供する。

南方では五月五日の端午の節句に食べるチマキ、月餅にかならず塩漬けの卵の黄身を入れる。また南北を問わず年中食べる粥に欠かせないものである。

鹹蛋はカルシウムを豊富に含み、疲労回復、食欲不振、産前産後、酒の肴に最適である。それにしても塩やわら灰を利用するなど、中国人の発想に敵意を表する。


<原文ママ>
出展:折々の切楽板記(著者 福新楼 谷口昌介)より